
今回は徴兵制度に欠かせない兵役検査について書きます。
ドイツ政府は先週、兵役検査を義務化する事を閣議決定。
国防委員会からは
「手緩い!」
との非難の声も聞かれたが、ピストーリス国防大臣は
「これで兵士不足は解消される。」
と余裕をかませていた。
が、これが真っ赤な嘘なんである。
この記事の目次
一般徴兵制度
そもそも
“allgemene Wehrpflicht”(一般徴兵制度)
をドイツで初めて導入したのは、プロイセン王国です。
きっかけはナポレオン戦争での敗北。
こてんぱんに叩かれて、領土の2/3を失った。
ここで王様が
「旧態依然の体制のままでは勝ち目はない!」
と、国内の大改革を命令。
その一環で、1813年に一般徴兵制度が導入されました。
その後、プロイセンは憎っくきナポレオンを破ったばかりか、
で破竹の快進撃。
これを見たドイツ諸侯はプロイセンの真似をして、相次いで一般徴兵制度を導入したんです。
徴兵制度の終焉
2011年7月、その長い伝統に終止符が打たれました。
国防大臣のグテンベルクが、
「ロシアの脅威がなくなった今、徴兵制度は要らない。」
と(前)メルケル首相を説得。
当初、メルケル首相は廃止に反対していたが、自身が任命した国防大臣の
「判断力」
を信用した。
だがこれが
「大きな誤算」
だった。
グテンベルク国防大臣はその後、スキャンダルで辞任。
その後、グテンベルク氏は
「経済界と政治を繋ぐロビイスト」
として暗躍。
ドイツ経済犯罪史に残る、
でも暗躍するなど、
その悪役振りは収まる事を知らない。
皆まで言えば現経済大臣と
「ねんごろの関係」
を保っており、
「今度は何をしでかす?」
と頭が痛い。
兵士不足に悩むドイツ軍
以来、24年間、ドイツ軍は兵士不足に悩んでいる。
そのドイツ軍の
“Sollstärke”(定員)
は26万人。
が、現状は18万人と実に哀しい状況だ。
参考までに上げておくと、自衛隊の定員は24万人。
実際には22万人でこちらも兵士不足。
まあ、似たり寄ったりの状況だ。
人気がない理由
では何故、ドイツ軍は人気がないのだろう?
と言うのも、
新兵で2700ユーロ/月。
日本円で46万円。
将校だったら3450ユーロ/月。
日本円で60万円。
おまけに
“Soldatenbuch”(兵士手帳)
を見せれば、鉄道には無料で乗れる(2等車)。
このようにドイツの兵士は、日本より格段に待遇がいいのに、何故、
「兵士になろう!」
という人が少ないのだろう。
と、わざわざ聞くまでもない。
「きついのは嫌。」
と思ってるZ世代が軍隊生活なんぞ、望むわけがない。
さらに!
大学なんぞいかなくても、ドイツなら暖房機の取り付け職人でもお給料は3500ユーロから。
大型二種免許があれば、🚌の運転手でお給料は2850ユーロから、
兵士になるより、民間で働いた方がお給料がいい!
なのに、
「お給料は低くても、お国の為に!」
とZ世代が考えるわけがない。
生活環境の悪さ
この
「Z世代のドイツ人新兵」
を見てください。
男性は半数以上が、
「ぷっくり」
お腹が膨らんでいる。
情けない、、、
まだ20代でお腹が出るなんて、、、
まだ女性の方が体系的にはマシ。
私が自衛隊に居た頃、新たに入ってきた同期の仲間はしばらくして
「自衛隊って、野外でキャンプするのが仕事だと思ってた。」
と吐露してました。
「お腹の具合」
から判断するに、ドイツ人の民間人も
「ほぼ同じ」
です。
そんなZ世代が、
- 二段ベット
- カビだらけのシャワー室
- WIFIなし
に耐えられるわけがない。
間違って入隊しても、すぐに辞めて逝きます。
自由徴兵制度
ところがである。
消えた筈のロシアの脅威は、今、
「ドイツの安全保障上最大の危険」
となった。
そこで前政権はドイツ軍の増強を迫られた。
しかしSPDの要職(幹事長、内閣官房長官)に就いていたのは、新ロシア派の政治家。
彼らが
「一般徴兵制度の再導入」
を許す筈もなく、国防大臣は
という
「何の役にも立たない制度」
の導入しかできなかった。
新政権 国防計画を見直し
ここでやっと信号政権が崩壊した。
新政権はウクライナ支援にも積極的な上、SPD内部で
「新ロシア派」
が総選挙での惨敗の責任を取らされて、要職を失った。
お陰で、国防計画を見直す障害物がなくなった。
まず与党のCDU / CSUは、
「徴兵制度の復活」
を望んだ。
が、連立相手のSPDは
「政策の180度転換は国民の反発を買う。」
と消極的。
もっとも世論調査によると、国民の55%が一般徴兵制度の再導入に賛成だ。
唯一、兵役を課されるZ世代は大多数がこれに反対していただけ。
NATO Ostfranke
ここでNATOが
「ロシアの侵略に対抗するには、ドイツ軍の定員を39万5000人にすることが必要。」
と言い出した。
この数は現在のドイツ軍の現在の人員の2倍だ。
さらに!
NATOが
「ロシアが真っ先に侵攻する」
と予想しているリトアニアの
“Ostfranke”(東部戦線)
にドイツ軍は
“Brigade Litauen”(リトアニア旅団)
を編成して派遣した。
最もロシア侵攻の脅威が高い為、リトアニア旅団には最新の装備を有する精強部隊が派遣された。
お陰で、
「主力をリトアニアに派遣したので、国内に残っている兵力では国防は無理。
という危険な状態だ。
逆ダンケルク?
この状態は第二次大戦中、イギリス軍の主力がダンケルクでドイツ軍に包囲された状況によく似ている。
この主力を失うと、イギリス国内の防衛にも事欠く。
そこでチャーチルは
“Operation Dynamo”
を発令、
全国民に
「個人ボートで兵士を連れ帰ってくれ!」
と頼み込んだ。
この作戦が大成功。
イギリス軍の主力は脱出に成功。
お陰でドイツ軍のイギリス侵攻作戦
“Seelöwe”(アシカ作戦)
を防ぐことができた。
ロシア軍も間違いなく、
「柳の下の二匹目の泥鰌」
を狙ってバルト海に進軍、リトアニア旅団の包囲を図る。
これに成功するとドイツ本土は
「ズボンを降ろした状態」
で、ロシア軍と対峙することになる。
兵役適合検査義務化で兵士不足解消?
この危険を取り除くべく、国防省は
「兵力増強計画」
を立案した。
それは
- 兵役アンケートへの回答を義務化(2026年から)
- 兵役検査の義務化(2027年から)
- 十分な兵士が集まらない場合は兵役義務化(2029年から)
と言う内容だった。
言わずもがな、兵役検査の義務化の対象は2008年以降に生まれた男性のみ。
兵役検査義務化に非難の声
ところがこの国防省の
「兵役検査の義務化計画」
に、政府内部から非難の声があがってる。
その主張は、
「2029年から兵役義務化では遅すぎる!」
というもの。
そもそもヒトラーが
「戦争を1939年に始めた理由」
を存じですか?
それはドイツ軍の圧倒的な軍備と兵士の数での優勢が故。
開戦を1年遅らすと、この
「数の上での優勢」
がなくなる。
だからどうしても1938年に戦争を始めたかった。
ところがチェンバリンが妥協に次ぐ、妥協をした為、ヒトラーは戦争を始めることができなかった。
この為、戦争を始める最後のチャンスが1939年だった。
ロシアだって馬鹿じゃない。
ドイツ軍の国防準備が整うまで待ってはくれない。
せめて2028年から兵役義務化にしないと、間に合わない。
ところがである。
ドイツ国内には新兵を受け入れる兵舎がない。
そこでまずは兵舎の建設から始めると、平和時の今、これを建設するには2~3年かかる。
この為、兵役義務化を前倒しにするのは難しい。
2018年ならなんとか可能だが、2017年は到底無理。
徴兵制度 ピストーリウス国防相の狙い
肝心のピストーリウス国防相は、
「兵役の魅力を増やす事で必要な人員は確保できる。義務化は必要ない。」
と言っている。
兵役を最後まで耐えた者は、車の運転免許証が無償で取れるというのもの。
あなたは車の運転免許の為、2年間、自衛隊でいじめられる覚悟があります?
辞めといた方がいいです(経験者談)。
もっともあの現実的なピストーリウス国防相、
「絵に描いた餅」
を本当に信じているわけではない。
まずは
「兵役適合検査だけだから。」
と若者の警戒感を解き、その後、
「志願兵制度では(やっぱり)駄目だったから」
と徴兵制度を復活させる狙いがある。
もっともその場合でも徴兵期間はたったの6ヶ月。
私は3年間も自衛隊でいじめられたんだよ!
Z世代には
「精神を叩き直す」
もとい、
「世の中の不条理を身をもって体験する」
いい機会になると思います。
あくまでも個人の意見です。
