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独 vs.日 オーストラリア海軍 駆逐艦 入札競争

投稿日:2025年9月18日 更新日:

独 vs.日 オーストラリア海軍 駆逐艦 入札競争

今回のテーマはオーストリア海軍の 駆逐艦 入札競争です。

2024年2月、オーストリア政府は海軍力の強化の為、11隻の駆逐艦の調達を決定。

各国からの入札を募った。

これに参加したのは日本、ドイツ、スペイン、韓国の4国。

そしてこの入札競争に勝ったのは、、

駆逐艦 って何?

駆逐艦って何?
まずは、

質問
駆逐艦って何よ?

 

というZ世代の為に、用語の解説から始めます。

日本での公式な名前は護衛艦です。

しばらく前までは駆逐艦、ドイツ語では

“Zerstörer”(破壊者)

と呼ばれていました。

それが

「戦争を想起させると民衆へのウケが悪い。」

ということで駆逐艦は護衛艦に、破壊者は

“Fregatte”(フレガッテ)

に名前が代わりました。

参照 : Fregatte

 

日本語の護衛艦はまあいいけど、

「フレガッテ」

と言われても、

“Korkette”(コロッケ)

みたいで、全くピンとこない、、、

この為、ここでは駆逐艦と書きます。

目的

駆逐艦の目的は大型船舶(戦艦、空母、輸送船)の護衛。

大型船舶は動きがトロイ上、デカイ。

お陰で敵の潜水艦や水雷艇のいい標的です。

そこで小型で動きの速い駆逐艦が、敵の潜水艦や水雷艇を見つけて破壊する役目を負ってます。

加えて最新の駆逐艦は

「空からの脅威」

に備えるため、さまざまな防空装備を積んでます。

もし中国、もとい、敵国の駆逐艦との戦闘になった場合は、まずは対艦ミサイルで対応。

この為、かっては重要だった

「主砲」

は、ほぼ飾りに成り下がりました。

今、大多数の駆逐艦の主砲は127mm。

レインメタル社の新型パンター戦車は130mm砲ですから、

ラインメタル社 過去最高額のオーダーゲット!

「戦車の主砲程度」

の大きさです。

ポケット戦艦

ちなみにドイツ海軍は第二次大戦前、俗に言う

「ポケット戦艦」

を、建造してました。

ドイツの優れた造船技術で駆逐艦ほどの排水量ながら、戦艦並みの主砲を擁した駆逐艦です。

一番有名な例はグラーフ シュペー号。

その主砲は戦艦大和にも迫る28cm砲の三連装砲。

敵の輸送船などを破壊して、

「さっさと逃げる」

戦術で、連合軍に痛手を負わせます。

怒った英国海軍が捜索部隊を派遣、ウルグアイ沖で3隻の重巡洋艦とご対面。

レーダーを持たないグラーフ シュペー号は当初、

「あ、鴨を見つけた!」

と敵艦隊に接近。

ところが鴨の筈の船舶から艦砲射撃をくらい、敵の巡洋艦隊だとわかります。

足の速さを利用して逃げればいいのに艦長が

「全速力で敵に接近せよ!」

と命令。

これが命取りになりました。

これが南雲中将だったら間違いなく、逃げてたよ!

すなわち!

ポケット戦艦は敵の戦艦と対抗できるほどの火力を持った駆逐艦でした。

重要性を増す 駆逐艦

洋上での戦闘を決する戦力が戦艦から空母に以降したことにより、駆逐艦の重要性が増しました。

質問
なんで?

 

1隻の空母には10隻もの

「随行船」

が一緒に出動します。

その半数は駆逐艦です。

フォークランド紛争では空母を守っていたイギリス海軍の駆逐艦が

「一発の対艦ミサイル」

で沈没。

ミサイルの弾頭は不発に終わったのに!

その後、イギリス海軍は空母を敵の飛行機の射程距離外に撤退させた。

でもこれでは、空母を戦闘に投入できない!

そこで

「ガラスの女王」

を守るため、駆逐艦には多数の対空防御ミサイルが積まれています。

さらにはドローンやミサイルを打ち落とす機関砲を複数装備。

戦艦がなくなった今、

海上防護の主力は駆逐艦が担っています。

SEA 3000

オーストリア政府は中国、もとい、

「仮想敵国乙」

の脅威に備えるため、海軍の軍事力強化を決定。

早い話が駆逐艦の増強です。

問題はオーストリアの駆逐艦や潜水艦を建造する能力は

「限定的」

だったこと。

国産の潜水艦に至っては、国防大臣が自ら語った通り、

「一度潜水したら、浮かんで来るかは運次第」

という始末。

そこで海外から入札を募ることに。

潜水艦の公開入札は、2年前に行われました。

独・スペイン・韓国 三つ巴の潜水艦売り込み競争

今回は

“SEA 3000”

のお題目で、世界各国から駆逐艦の入札を募りました。

参照 : SEA 3000

独 vs.日 オーストラリア海軍 駆逐艦 入札競争

まずはスペインと韓国が早々に

「最終候補」

から脱落。

残ったのは日本とドイツ。

こうして

「独 vs.日 オーストラリア海軍 駆逐艦 入札競争」

の幕が切って落とされました。

駆逐艦 MEKO A-200

ドイツ側はドイツ統一戦争の頃からドイツ軍の

「ご用達」

の軍需産業

“TKMS”(TheyssenKrupp Marine Systems)

が製造するベストセラー駆逐艦

“MEKO A-200”

を競争に送ります。

最初に建造されたのは80年代なので、

「最新」

ではありません。

主な装備は以下の通り。

  • 全長 116.72m
  • 全幅 14,80m
  • 深さ 4.25m
  • 排水量 3450トン
  • 出力 47.000 PS
  • 最大速力 31ノット
  • 乗員 120名+予備50名
  • 主砲 127mm(54口径)
  • 対空防御 RIM-7 Sea Sparrow 8基
  • 対空防御 4連奏 MK-48 VLS-Strater 2基
  • 対艦防御 Harpoon 対艦ミサイル4基
  • 機関銃 25mm機関砲 3基
  • 3連奏魚雷発射装置 2基
  • お値段 500億ユーロ(今のレートで860億円)
参照 : MEKO A-200

もがみ型 駆逐艦

一方、日本側(三菱重工業)が入札に送ったのは、もがみ型護衛艦。

こちらは2019年に建造が始まった

「最新型」

の駆逐艦です。

主な装備は以下の通り。

  • 全長 133m
  • 全幅 16,3m
  • 深さ 9m
  • 排水量 5500トン
  • 出力 70.000 PS
  • 最大速力 30ノット+
  • 乗員 90名
  • 主砲 127mm(54口径)
  • 対空防御 SEA RAM 1基
  • 対空防御 16装 MK-41 VLS-Strater 1基
  • 対艦防御 17式対艦誘導弾 4連奏発射筒 2基
  • 機関銃  機関銃架 2基
  • 3連奏魚雷発射装置 2基
  • お値段 500億円

どっちが良いオプション?

各駆逐艦の性能を

「ざっくり」

みると、ペーパー上は似通った機動性・武装を有している。

特筆すべきはもがみ型は

  • ステルス性能が優れている
  • 少ない乗員でやりくりできる
  • 後部に哨戒ヘリコプターの離着陸が可能

という点。

しかるにお値段でみると、もがみ型が猛烈に安い。

が、これは急激な円安の為。

オーストラリアドルで換算すると、

「もがみ型の方が高価」

だと言われている。

駆逐艦 入札競争 勝者は、、

安倍政権下で

「防衛装備品の輸出」

を解禁してからはや10年。

が、全く売れなかった。

皆まで言えば、過去、オーストリアの防衛装備の多くはスウエーデンの

”Saab”

が納入してきた。

日本で言えば三菱重工で、防衛装備品のご用達先。

だから”TKMS”(ドイツ側)は”SAAB”と組んで、

「現地生産すます。」

と売り込んだ。

だから、

「今回も売り上手なドイツの勝ち」

だと思っていたら、嬉しい誤算。

なんと日本が、オーストリア海軍の駆逐艦 入札競争に勝ってしまった。

 

勝因は何処に?

駆逐艦 入札競争に勝って

「日本製は世界一」

と天狗になる前に、冷静に勝因を分析してみる必要がある。

まずオーストリア海軍は日本同様に、

「人員不足」

に悩んでいる。

もがみ型は少ない乗員数でこなせるので、これがセールスポイントになった。

又、アメリカ側からの

「日本に注文すべきだ。」

というお勧め(それとも脅迫?)も、オーストリア政府の背中を押した。

しかし最大の要因は、

「政治的な要因だった。」

と言われている。

政治的な要因

オーストリア政府は装備品の公開入札をする度に、

「関係国との関係をこじらせる。」

事で有名だ。

先回の潜水艦の公開入札でも、

「おフランス製に決めますた。」

と発表。

ところがサインをする前に、米国製の原子力潜水艦に鞍替えした。

怒ったフランス政府はオーストリア政府を訴え、今でも関係がぎくしゃくしている。

こうした経験から、

「もう一回、同じことをやると政治的に孤立する。」

とわかっていた。

そこで距離的に近い日本を優先した。

何しろ、日本製の駆逐艦を装備すれば、公海上で故障した場合は日本で修理ができる。

延々、オーストラリアまで曳航していく手間を節約できる。

又、その逆もしかり。

結果、両国のパートナーシップがさらに強固なものになる。

こうした背景があり日本製の駆逐艦の納入となった。

ずる賢いオーストリア人

皆まで言えば、”TKMS”(ドイツ側)は数か月前に

「お宅のオファーは選抜対象から外れました。」

と連絡があったという。

質問
なんで発表前に連絡するん?

 

さもないと”TKMS”は受注した場合に備えて、造船所のキャパを開けておく必要があるからです。

三菱重工と違い、”TKMS”は世界か国からのオーダーで

「2030年まで製造能力に空きがない。」

という大繁盛ぶり。

そこで迷惑がかからないように、

「極秘」

で決定を伝えたんです。

質問
なんでその時、日本側に通達しないの?

 

それは日本側に

「まだ決まっていませんよ。」

と思わせて、有利な条件を引き出すためです。

案の定、三菱重工は、

「自衛隊に納入予定の駆逐艦を先に、オーストリア海軍に納入すます。」

と譲歩。

(日本政府も承諾。)

おまけに日本で建造するのは3隻のみ。

残りは現地生産とという約束を取り付けた。

流石、悪賢いオーストラリア人。

ドイツは ein guter Verlierer

ドイツではスポーツなどで負けた場合、

せめて”ein schlechter Verlierer”(最悪の敗者)だけにはならない。

 

事が至上課題とされている。

質問
どういう意味?

 

敗北を審判のせいにする事です。

北朝鮮の選手が負ける度に、審判を脅すのは定番です。

そこでドイツでは負けた後は、勝った相手を褒めて、

“ein guter Vrelierer”(良き敗者)

を演じます。

心の中では、別の考えでも。

ところがアジアでは

「良き敗者」

という習慣がない。

なのに韓国のナショナルチームの監督に就任していたドイツ人監督が敗北後、勝者を褒めた。

どうなったと思います?

翌日、トレーナーをクビになりました。

「相手を褒めるなど、なんたる失態だ!」

と韓国人が怒ったんです。

怖いですね。

今回オーストリア海軍の駆逐艦 入札競争で負けたドイツは(フランスと異なり)、裁判に持ち込むことはしませんでした。

“ein guter Vrelierer”(良き敗者)です。

イケイケドンドン?

何はともあれ今回のオーストリア海軍の駆逐艦 入札競争の勝利で、

「売れない日本の防御装備品」

のジンクスが崩れた。

競争入札になるとよく、

「これまでの納入実績は?」

と聞かれる。

これまで日本は、

「ぐうの音」

しかでなかった。

これからは、

「納入実績」

と堂々と威張れる。

加えて中国、もとい

「仮想敵国乙」

の海洋進出お陰で、アジアにおける駆逐艦の需要は増す一方。

フィリピンやタイ海軍にはちと高価で無理かもしれないが、インドネシア、ベトナムひいてはインド海軍なども

「潜在的顧客」

の視野に入ってくる。

何しろ韓国は

「武器輸出額世界第四位」

にのしあがり、毎年、大儲けしている。

 

日本も是非、真似をして

“Tote Hose”

の海運業、日本の防衛産業に活気を戻してもらいたい。

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執筆者:

nishi

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