
今回はランブレヒト国防相の辞任を取り上げます。
そう、
「史上最悪の国防相」
の異名をいただいていた困った人です。
日本ではこの件に関して、哀しいほど誤った報道をしていた。
一体、何をどう解釈したら、あんなにいい加減な報道になる?
ドイツの達人が、本当の事実関係を紹介します。
この記事の目次
雉も鳴かずば撃たれまい
ランブレヒト国防相を辞任に追い込んだ
「樽を溢れ指す一滴」
は、国防相が年始に投稿した
「お説教ビデヲ」
だった。
「あまりにもひどい!」
という声は政敵はもとより、党内からも聞かれた。
もっとも国防相が非難されたのは、今回が最初ではない。
ただ今回は、
「戦争時のドイツの国防相がこれでいいのか?」
というメデイアによる報道が応えたという。
ランブレヒト国防相はその報道ぶりを見て、
「もうやっていけない。」
と覚悟を決めた。
日本でよくある
「事実上の更迭」
ではなく、本当に本人が諦めた。
「雉も鳴かずば撃たれまい。」
とはこの事だ。
深夜に余計な事をせず、テレビを見ながら年越しそばを食っていれば、今でも国防相をやっていただろうに。
国防相不在
ここで問題が発生した。
そもそもショルツ首相は、
「どんなに無能でも、大臣はクビにしない。」
という鉄の法則を実施していた。
これまでランブレヒト国防相が何度スキャンダルを繰り返しても、解任する気がなかったので、後任者を探してない。
なのに、
「辞めたいっす。」
と言い出したランブレヒト国防相。
戦争中に、
「国防相不在」
ではお話にならない。
そこで、
「後任者が見つかるまで、絶対に口外するな。」
と釘を刺してから、後任探しが始まった。
が、1月13日(金曜日)に
「国防相が辞任を決めたようだ。」
とリークした。
国防相と首相官邸は、
「噂にはコメントしない。」
とコメント、暗に噂の真実性を確かめてしまった。
辞任しないのなら、
「全く根拠のない出鱈目。」
と、噂が規制事実にならないように、
「火消し」
をするものです。
なのに、
「コメントしない。」
というのは、噂が真実であるからに他ない。
ランブレヒト国防相 後任者探し
しかし、ランブレヒト国防相の後継者探しは、難航した。
それはショルツ首相自身の責任でもある。
「男性と女性を均等に大臣に就ける。」
と、好感度の上昇を狙ったからだ。
お陰で
もしショルツ首相は好感度を最優先するなら、また
「中尉と中佐の区別もできないど素人の女性」
が戦時に国防相に任命することになる。
もっとも
「好感度を優先した人事」
がどんなに
「マズイ」
人事だったか、ショルツ首相にもうっすらとわかってきた。
が、問題は適した人材が居ない。
第一次大戦の滅茶苦茶不利な停戦条約に調印したのもSPD。
当然、SPD内には兵役を経験した者が少ない。
加えて国防相のポストは、
「兵役をしていれば誰でもいい。」
というわけではない。
オリンピック担当大臣とはワケが違う。
だから後任者探しは難航した。
ランブレヒト国防相 遂に辞任を発表
金曜日、土曜日、日曜日の3日間、ランブレヒト国防相はだんまり通した。
みるにみかねて野党は、
「辞めるのか、辞めないのかはっきりさせろ!」
と苦言を呈した。
流石のショルツ首相も、これはマズイと悟った。
何しろ今は戦時下だ。
4日目の月曜日になって、やっとランブレヒト国防相は辞表を出す事を許された。
後任不在のまま。
リーダーシップの欠如
ランブレヒト国防相辞任を受けてドイツの政府系メデイアは、
「首相のリーダーシップの欠如の証」
と政府を非難した。
ランブレヒト国防相が
「役に立たない事」
は、これまでの数々のスキャンダルで証明されていた。
https://pfad.tech/blog/munitionsmangel/
なのにショルツ首相はクビを切るどころか、
「よくやっている。」
と見当はずれの誉め言葉で急場を逃れてきた。
リーダーシップを発揮して
「スキャンダル連続製造マシーン」
と化した大臣をクビにして、さっさと後任者探しをしていば、
「戦時に国防相が居ない。」
という無様な姿をさらすことはなかったろう。
新国防相ピストーリウス就任

ランブレヒト国防相の後任は、ニーダーザクセン州の現職内務相のボリス ピストーリウス氏に決まった。
そう、ショルツ首相は自らが導入した、
「男女平等の原則」
を破棄した。
もっとわかりやすく言えば、
「中尉と中佐の区別ができる国防相候補」
を探した挙句、SPDでは珍しく兵役(陸軍)経験のあるピストーリウス氏に
「白羽の矢」
が向けられた。
ランブレヒト国防相の後任 どんな人?
氏はかって州内で問題を起こすイスラム教徒を、
「不適切外国人」
として故郷に強制送還を実施した
「実績」
がある、
当然、左派の平和主義者から猛反発をくらったが、折れなかった。
以来、氏は
“Pragmatiker”(実際家)
として知られている。
必要とあれば、建前よりも実利を優先する人だ。
氏には
「全国進出」
の野望があり、
「探せ!SPD党首カップル!」
に出馬したが、知名度のなさで落選。
これまでは運に恵まれていなかった。
が、ショルツ首相の
「もうパイがない!」
という緊急事態が、氏の全国進出を可能にした。
ピストーリウス国防相は就任早々、
「ウクライナへの軍事支援会議」
にやってきた米国の国防大臣と会談。
就任から2日目の金曜日には、軍事支援会議でドイツのレオパルト2戦車の供給の決定を下すことになる。
全く、準備がないのに大役をこなせるだろうか?
ドイツ レオパルト2戦車の供給を拒否!
注目されていたラムシュタインで開催されたウクライナ軍事支援会議。
ここで戦車の供給が話し合われた。
ドイツはこれまで、
「西側のどの国も主力戦車を提供していない。」
とウクライナへの戦車供給を拒否。
が、イギリスがチャンレンジャー2型戦車を提供する事を決定。
お陰でドイツはこれまでの
「言い訳」
が使えなくなった。
困ったショルツ首相は会議前、
「米国がアブラムス戦車を提供すれば、ドイツも、、。」
と語った。
が、米国はアブラムス戦車の提供を会議の前に拒否。
お陰でドイツは、
「レオパルド2戦車は提供しない。」
と逃げた。
なんという腰抜けのドイツ政府だろう。
欧州で起きている戦争なのに、アメリカの影に隠れて、
「アメリカが一緒にやらないと、、」
と自立できない。
初めての幼稚園で、母親と別れるのを拒否する子供の様だ。
ドイツが出したくなければ、レオパルド2戦車を保有する他国の
「輸出」
を許可するだけでもいい。
ドイツはこれも拒否。
ドイツ国内では野党はもとより、連立政権内からも非難の声が大きくなっている。

