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水素自動車 オワコン 普及を妨げた3つの要因

投稿日:2025年9月10日 更新日:

水素自動車 オワコン 普及を妨げた3つの要因

今回のテーマは水素自動車です。

日本では

「排ガスの代わりに出てくるのは水だけ!」

と、その未来を(未だに)信じている方が少なくない。

が、日本から遠く離れた欧米では水素自動車はオワコン。

以下に詳しく解説します。

水素自動車 オワコン 普及を妨げた3つの要因

水素自動車の終焉 理想に駆られた高価な夢

水素自動車への期待は大きかった。

何しろ石油資源に縁のない日本で

  • 再生可能なエネルギー
  • 環境に優しい

と聞けば、

「将来のエネルギー源」

と思いたくなる気持ちは十分に理解できる。

が、

「絵に描いた餅」

に感激するあまり現実を見ていなかった。

水素自動車 低いエネルギー効率

以前、ここで同様の記事を書きました。

水素、それとも電気自動車?

その繰り返しになりますが、水素自動車が成功しなかった最初の、そして決定的な要因は

“Wirkungsgrad”(エネルギー効率)

の低さです。

ガソリン車のエネルギー効率は平均40%だ。

質問
どういう意味?

 

ガソリンに含まれているエネルギーの40%が推進力になります。

 

 

燃費の悪い車だとこのエネルギー効率が下がるのは、説明するまでもない。

これが

「燃費のいいデイーゼルエンジン車」

だと50%を超える。

これが電気自動車になると、なんと69%ものエネルギー効率。

すなわち!

電気自動車を再生可能エネルギーで作ったグリーンな電気で駆動すれば、

「化石エネルギーから脱却した上に環境まで救える」

わけだ。

しかし水素自動車のエネルギー効率は、たったの26%なんである。

 

化石エネルギーに代わるエネルギー源としては、エネルギー効率が悪すぎた。

高すぎするコスト

加えて水素は

「気体のまま」

では輸送も保管にも事を欠く。

液化しないと、エネルギー源としては役に立たない。

そこで水素自動車に

「給油」

する水素はマイナス253度に冷却されている。

 

結果、水素ステーションの建設費用は4億円にも上る。

とてもじゃないが、水素ステーションは

「元が取れる商売」

じゃない。

お陰でドイツの水素ステーションは次々に廃業。

水素自動車の未来を信じて高い水素自動車を購入した消費者は、

「給油」

もできず、大きな問題と直面している。

足らない水素

水素自動車が失敗した最後の要因は

「グリーンな水素が足らない。」

という意外な点。

現在、日本では水素を天然ガスから

「精製」

している。

これを灰色水素という。

灰色水素の問題は、その精製の際に発生する膨大な量の二酸化炭素。

日本ではこれを無視して、

「水素はクリーンな未来のエネルギー源。」

と宣伝、そして

「疑う事をしらぬ民」

もこれを信じているので、

「水素自動車への期待」

は一向に減退しない。

だったら

わざわざ天然ガスから水素を取り出さないで、天然ガスをエネルギーに使ったほうがコストが安い。

 

もし本当に環境を救う気なら

「グリーンな水素」

が必要になる。

それも大量に。

が、そんな大量のグリーンな水素の製造能力は何所にも存在してない。

結果、ドイツではグリーンな水素で鉄鋼を生産する筈だった大手鉄鋼メーカーが、相次いで計画を棚上げしている。

水素自動車の終焉

大手自動車メーカーの

“Stellantis”

参照 : Stellantis

 

は、2025年夏から同社が開発した水素自動車の生産を始めるはずだった。

が、土壇場になってこの計画を見送った。

参照 : focus.de

 

質問
なんで?

 

水素自動車を給油する水素ステーションがないからだ。

消費者も

「給油できない高価な水素自動車」

を買うほど馬鹿じゃない。

ステランテイスが水素自動車を破棄した今、欧州で水素自動車を

「まだ諦めていない」

のはBMWだけ。

計画では2028年から販売開始するそうです。

よければ私と

  1. 計画通り水素自動車の販売を開始するか、
  2. それともステランテイスのように直前に計画をキャンセルするか

賭けてみます?

もし誰かが1.の選択肢を選んでくれればの話だが。

日本で売れない電気自動車

10年ほど前、ここで

「電気自動車への転換に成功するかどうかが、自動車メーカーの命運を分ける」

と、日本の自動車メーカーに

「頑張って!」

とエールを送った。

日本の自動車業界 千載一遇のチャンスの到来!

残念なことにこのエールは、日本メーカーに無視された。

結果、日本の自動車メーカーは

「電気自動車の波」

に完全に出遅れた。

挙句の果てには日本の自動車メーカーは政府に

「助けてください。」

と陳情する始末。

自動車産業は日本経済の大黒柱。

そこで日本政府は陳情を受け入れて、電気自動車購入補助金を導入した。

この補助金で

  1. 電気自動車の販売台数を稼ぎ
  2. 薄利なマージンでも利益を確保して
  3. 外国でも電気自動車で攻勢に出る

という狙いがった。

が、

「象が蚊に刺された」

程度の効果しかなかった。

2025年7月の電気自動車販売台数は、8000台にも届かない。

しかも、そのわずかな販売台数の大多数は輸入車だ。

日本製の電気自動車が哀しいほど売れない

国民は

「貧相なスペック」

に愛想をつかして、外国産の電気自動車を選ぶのだ。

ちなみに購入補助金がなく、国民の数が日本の2/3のドイツの電気自動車販売台数は4万9000台だ。

同じく2025年7月の販売台数統計によれば。

だから日本人は

「電気自動車はオワコン」

と思っている。

が、実際にオワコンなのは水素自動車です。

日本で電気自動車が売れないワケ

購入補助金にも拘わらず、日本で電気自動車が売れないのは何故だろう?

とわざわざ聞くまでもない。

それは水素自動車が終焉した理由と同じで、充電設備が少なすぎる。

 

なのに日本の学者は、

「日本のEV充電インフラは世界トップレベル。充電スポット数も増やす必要がないほど十分。」

などと主張。

これが専門家だ。

学者は文献しか読まず、現実を見ないで結論を出す。

言い替えると

木を見て、森を見ない。

 

加えて私はそもそも日本の経済専門家が、

「的をとらえた発言」

をしたのを聞いたことがない。

そんな専門家が政治家にアドバイスするから、

「効果のない電気自動車購入補助金」

が出来上がる。

その結果、

日本人は世界ではオワコンの水素自動車の将来を信じている。

 

これを精神のガラパゴス化と言います。

その結果はあちこちで見ることができる。

その

“Paradebeispiel”(典型的な例)

がジャパン デイスプレイです。

専門家の助言により、日本政府は将来性のないテクノロジーに税金を投入。

これが日本経済が

「ドツボ」

にはまっている原因です。

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執筆者:

nishi

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