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ドイツで離婚 – 失われた愛の慰謝料は存在せず!

投稿日:2014年10月17日 更新日:

ドイツで離婚 - 失われた愛の慰謝料は存在せず!
今回のテーマは ドイツで離婚 。

というのも

「ドイツで離婚」

と検索されてこのページに到着される方が結構、多い。

そう、ドイツ人と結婚された日本人がパートナーに、

「ドイツで離婚はどうするの?」

と聞くわけにもいかず、必死に情報を探しているんです。

そこで今回はこのテーマを取り上げます。

ドイツの離婚率

そもそもドイツの離婚率をご存じですか?

勿論、毎年変動しています。

でもざっくりいえば、

「ほぼ半数のカップル」

が離婚します。

 

同じ環境で育って、同じ考え方をするドイツ人同士の結婚だってこの有様。

これが異文化間の結婚になれば、ドイツ人同士の結婚より離婚率が低いわけがない。

そこで

「ドイツで離婚」

となるとどんな手順になるか、その手順を解説してみよう。

ドイツで離婚 – 結婚前にすべてが決まる!

ドイツで離婚 - 結婚前にすべてが決まる!

いざ結婚!

となると、嬉しさのあまり将来を考えない方が大半です。

私のように、

「離婚に備えて、、。」

なんて言い出そうものなら非難轟轟で

「サイテーの人間!」

のレッテルを貼られます。

もっとも数年後には

「ドイツで離婚手続きは?」

を聞かれます。

しかしすでに時遅し。

というのも

ドイツで少しでも有利に離婚するには、結婚前の夫婦契約が欠かせません。

 

これをやっていないと、

「法律が保証する最低限度の保証」

しか受けれません。

一人ならまだいいですよ。

子連れでは自分の稼ぎで生活できるわけがなく、ドイツで生活保護を受けている日本人の母子家庭は多い。

そんな目に遭いたくないなら、結婚前に手を打っておきましょう。

Ehevetrag とは?

その夫婦契約はドイツ語で

“Ehevatrag”

です。

これは

「ドイツで離婚」

となった場合の

「民事上の問題をあらかじめ定める契約」

です。

参照 : Ehevetrag

 

具体的に言えば

  1. 夫婦間の資産配分
  2. 子供の扶養費
  3. 年金分配
  4. 夫婦期間中に購入した家具等の所有権など

です(*1)

質問
夫婦契約を結んでいない場合は?

 

その場合は民法で定められている

“Zugewinnausgleich”

が採用されます。

Zugewinnausgleich とは?

難しいドイツ語

”Zugewinnausgleich”

”Zugewinn”(増えた財産)+”Ausgleich”(分配)

からなる言葉。

その言葉の通り、

夫婦期間中に増えた財産を夫婦の間で公平に分けることになります。

 

 

すなわち!

あなたのパートナーが結婚前からお金持ちだった場合、あなたの

「取り分」

は、夫婦の共同生活で一緒に稼いだ財産の半分だけ(*2)。

そう、映画でよくある

「大金持ちの年配男性と結婚、3年後に離婚したら資産ががっぽり入ってくる。」

とういのは文字通り、映画の中だけの話です。

もっとひどいのはあなたとの結婚生活中に、旦那(夫婦)が財産を減らしている場合です。

この場合は、

「そもそも分配の対象になる財産がないっ!」

ということになります。

大雑把に言えば、

夫婦契約がない離婚では、お金を持っているパートナーに有利に働きます。

 

この為、もしあなたが、

「私が養ってあげるよ!」

という資産家の場合は、夫婦契約は必要なし(*3)。

それどころか、夫婦契約なんてないほうが有利です。

そうでなく、

「結婚後は旦那に養ってもらう!」

というケースでは夫婦契約は重要。

これなしでは離婚後、生活保護に頼る生活になりかねません!

ドイツで離婚 – その手順とは?

ドイツで離婚 - その手順とは?

では次にドイツで離婚する場合の手順について、解説していきます。

まずは日本と違う大事な点を抜粋すると、

ドイツでは離婚は裁判所で認可される必要があります。

裁判所で認可される必要があるという事は、弁護士が必要になります。

弁護士が必要になるということは、法律で必要とされる複雑な手順を踏まなければならず、その費用がかさむことになる。

 

という点です。

Trennungsjahr(別居)

「ドイツで離婚は避けようがない!」

となった場合の最初の手順は

“Trennungsjahr”(別居)

です。

双方が離婚に同意している場合でも、裁判所に離婚を申請する前に夫婦はまず一年間、別居して生活する必要がある。

 

これにより、ただの夫婦喧嘩や一時の気まぐれでない事を証明することになる。

もっとも別居といっても、別の住所に住む必要はない。

経済的な理由で物理的な別居が不可能な場合、同じアパートに住みながらの別居も認められている。

ただし!

寝室が別であるのは言うまでもなく、一緒に買い物をしたり洗濯をするのはご法度である。

「アイロンかけておいてよ。」

などと頼みごとをすると、一緒に経済活動を行っているとみなされて、裁判所で申請を却下される。

住んでいる場所は同じでも、別居しているように生活をする必要がある。

こうして距離を置いて、しかしひとつの屋根の下で生活していると、気持ちが戻って来ることもある。

そこで一時、

「別居」

を中止、また一緒に住み始めて、

「やっぱり駄目だわ。」

となった場合、この中断の時期も別居にカウントされるので、また最初からやり直す必要はない。

別居日記

「ドイツで離婚をするため、まずは別居!」

となったら、簡単な内容でいいから、

“Trennungstagesbuch”(別居日記)

をつけるようにしよう。

質問
日本語でいいの?

 

駄目です。

ドイツ語で書いてください。

その際、

一番大事なのは日付です。

 

日付がない日記は証拠能力がないので、毎回、日付から始めてください。

というのも裁判官が

「これは怪しいので調査が必要。」

と判断された場合、別居日記が証拠となります。

もし日本語で別居日記を書いていると、全部、自費で翻訳してもらう羽目になります。

相手が反対しているのに離婚できるの?

複雑になるのは、夫婦の一方が離婚に同意していない場合だ。

ドイツの民法では、この場合でも離婚は成立する。

ただし上述で述べた別居期間が1年ではなく、3年必要となる。

例外は相手が暴力を振るうなどのケース、それも再三に渡ってそのような行動があったことが証明されている場合だ。

このケースでは別居期間に関係なく、離婚できる。

もしパートナーに暴力を振るわれた場合は、将来に備えて病院で見てもらい、証拠を残しておこう。

後で離婚がスムーズに行く。

相互理解の上の離婚

双方が同意の上の離婚でも、面倒な手続きになる。

学生同士の結婚なら離婚も簡単だが、そのようなケースは稀。

通常は夫婦の間、経済活動を行っている。

その間に行われた経済活動で発生した利益を、お互いが納得するように配分する必要がある。

加えて結婚期間中、年金に掛け金を払い込んでいる。

将来、年金を受給する年齢に達した出た場合、これをどのように配分するのか、お互いが納得するように配分する必要がある。

これにには

「細かい計算」

が欠かせないので、弁護士が必要になる。

ドイツで離婚 – 扶養費はどうなる?

次はドイツで離婚後の問題

「扶養費」

について。

それも、とりわけ不利な立場に陥りやすい

「女性の待遇」

について見てみます。

離婚後の

“Ehegattenunterhalt”(パートナーの扶養費)

も、民法にて規定されています(*4)。

これまでは、ざっくり言うと、

分かれた旦那が4000ユーロ(手取り)で稼いでいれば、奥さんと子供にはその半分を要求できることが多かった。

 

しかしこれは2008年の法改正にて変わりました。

今後は、個々に判断されることになる。

法律改正後の扶養費の支払い

そもそも民法の改正に至ったのは、

「扶養費の支払いによって、これまでの稼ぎ頭だったパートナーが、過度の犠牲を払うようなことがあってはならない。」

 

という議論が故。

質問
どういう意味ですか。

 

話をわかりやすくするために、奥さんは結婚前は無職で、ドイツで認可されてている職業訓練も受けていなかったとしよう。

そう、日本人女性がドイツ人男性(*5)と結婚するために、日本での仕事を辞めてドイツにやってくるケースがこれに相当。

この場合、奥さんは

「そもそもドイツでお金を稼ぐ能力がなかった。」

とみなされて、

「婚姻により得をした」

とみなされます。

このようなケースでは、扶養費(養育費)はがっくり減ります。

 

(元)旦那に4000ユーロの収入があっても、扶養費はせいぜい1300ユーロがいい所(*6)。

それも子供が3歳になるまでだ。

その後は子供を預けて、仕事をしなければならない。

争点になるのは、奥さんが結婚前に日本で働いていた場合。

「結婚のために日本での仕事を辞めてドイツに来た。あのまま日本に居たら、、。」

と、もっと多額の扶養費を要求したい気持ちは、よっくわかる。

が、

ドイツでは日本のキャリアは認められないケースもあります。

 

こうした争点をあなたに有利な結果に導くために、ドイツで離婚するには弁護士が必要になります。

養育費の支払い

元旦那が、裁判なしに扶養費(養育費)の支払いに同意する稀なケースもある。

でもここで油断しては駄目!

ドイツ人の約束は、それが書かれている紙よりも価値がない。

 

本当に生活費がちゃんと支払われるのは最初の数ヶ月だけです。

半年も経つと、

「1ユーロも払われない!」

というケースが滅茶苦茶多い。

実際、離婚後の50%のケースでは、元旦那は約束した扶養費を払っていません。

参照 : faz.net

 

「離婚しても元旦那の生活費の支払いで十分に生活していけるわ。」

と取らぬ狸の皮算用をしていると、痛い目に遇います。

裁判所に離婚申請

お次は離婚裁判についてとりあげます。

1年間、別居して、

「いよいよ離婚裁判」

になりますが、上述の

”Zugewinnausgleich”(財産配分)

に加えて

  • 家財をどう分配するのか
  • 離婚後、どちらが今のアパートに住み続けるのか
  • どちらが子供をひきとるのか

など、こうした細かい点で

「すべて同意」

に達している場合に限り、

「双方が同意の上の離婚」

とみなされます。

ひとつでも同意に達していない場合、

「双方が同意していない離婚」

となり、3年の別居期間が必要となる。

そして1年、あるいは3年の別居期間後、裁判所に離婚を申請してようやく離婚裁判が始まる。

するとよく、

質問
弁護士なしでできませんか。

 

と聞かれます。

が、

この裁判所への申請は弁護士しかできないので、弁護士なくては離婚は不可能です。

 

弁護士は一人で大丈夫?

ドイツで離婚される方が必ず聞くのが、

質問
「弁護士は一人でもいいんですか。」

 

というもの。

技術上は問題ない。

しかし実際面では大きな問題がある。

まず、

どちらにも公平な離婚調停というのは、存在していません。

 

この現実をお忘れなく。

いくら

「同意の上での離婚です。」

とは言っても、必ず揉める事項が出てきます。

このとき弁護士は片方の味方をして、もう一方のパートナーの不利になる決定をせざるを得ない。

 

すると往々にして、

「ドイツ人に有利な」

決定をします。

これが外国離婚の現実です。

弁護士を一人で済ませて、お金を節約したい気持はわかります。

でも、肝心な所で節約したたため、貧乏くじをひくことになりかねない。

そしてその貧乏くじは、一生響きます。

しかしそんな事まで外国人にわかる筈もない。

もしドイツ人の(まだ)旦那が、

「弁護士は俺が依頼したから大丈夫。」

と、急にやさしくなったりするのは要注意のサインです。

そして出来上がった同意書は、(元)奥さんに不利な離婚内容になっている。

その同意書に書かれている意味を問いたくても、法律用語が理解できないので、まんまと騙されます。

悪いことは言わないから、双方、離婚専門の弁護士を使用すべきです。

裁判所の管轄

次に裁判所の管轄です。

ドイツ人、正確に言えばドイツ国籍を有する者と結婚して、ドイツに住んでいるカップルはドイツの裁判所が管轄になる。

問題が複雑になるのは、住んでいる場所が異なる場合。

例えば夫婦はすでに別居中で、旦那はベルリンに、奥さんは子供とデユッセルドルフに住んでいるとする。

するとどちらの裁判所に離婚を申請するのだろうか。

この場合は、子供の住んでいるデユッセルドルフの裁判所が管轄となる。

日本で離婚

もし

  1. 日本でドイツ国籍者と住んでいて
  2. 日本で離婚手続きをする。

という場合は問題がある。

すなわち!

日本で行われた離婚の離婚手続きは、ドイツでは無効であるという点。

すなわち!

もしドイツの官庁に夫婦の届出をしている場合、ドイツで離婚手続きを行わない限り、日本では離婚していても、ドイツでは結婚しているという法解釈になる。

 

「面倒なので、ドイツでは夫婦のままでいいや。」

などと手を抜くと、奥さん(あるいは旦那さん)には年金の受給資格が生まれるので、あとで大損(得)をする事になる。

離婚手続きにかかる時間

すでに次のパートナーが見つかっている場合、

「どれくらい時間がかかるんですか。」

と、大急ぎで処理を済ませたい方も居る。

上述の

「同意の上の離婚」

であれば早くて8ヶ月、通常は10ヶ月程度で離婚できる。

もっとも裁判所は大忙しなので、大都市の裁判所に申請すると1年かかることもある。

逆に同意していない離婚では、数年かかることもある。

尚、裁判所が離婚を拒否する場合もある。

パートナーが重病で死期が近いと裁判所が判断した場合、離婚は拒否されます。

 

ドイツで離婚 費用

次にはドイツ人が、

“Wie viel kostet der Spaß?”

と言うテーマ、すなわち離婚費用です。

言わずもがな、これが一番難しい。

と言うのも裁判所の費用はカップルの収入によって変わる。

さらに弁護士費用は、

  1. カップルの財産額
  2. 子供の数
  3. “Zugewinnausgleich”の額

で左右されます。

そこで結婚して一番安く上がる離婚のケースを上げます。

  1. 結婚してまだ1~2年の若いカップル
  2. 貯金が1万5千ユーロ程度
  3. 子供なし
  4. 一人の弁護士で済ませる

という場合でもざっとみて、弁護士費用が1700ユーロ程度、裁判費用が500ユーロ程度、合計2200ユーロ程度かかる。

これを双方が仲良く折半する。

学生同士の離婚であればもっと安くあがるかもしれないが、社会人の場合、これが最低の離婚費用となる。

浮気の慰謝料

浮気の慰謝料

日本はイスラム教の次に厳しい

「夫婦間の理念」

を憲法に書いている国です。

質問
何ソレ?

 

貞操義務の事です。

参照 : 貞操義務

 

この法的根拠のお陰で、

浮気をしたら、慰謝料の支払いを請求できちゃう!

 

日本に住んでいる方には、これが当たり前なので、

「(ドイツ人)旦那が浮気したから、慰謝料を取ってやる!」

と思われている方が大半です。

でも日本とイスラム国以外では、これはちと難しい。

ドイツで離婚 – 失われた愛の慰謝料は存在せず!

ドイツでは

„Schmerzensgeld für verlorene Liebe gibt es nicht.“(失われた愛の慰謝料は存在せず。)

 

と言われています。

浮気をしたパートナーに慰謝料を請求するのは自由ですが、裁判所がこれを認めることはありません。

質問
じゃ、やった者勝ちなの?

 

必ずしも、そういうわけではありません。

浮気が原因で離婚になると、話は少しだけ変わってきます。

浮気離婚裁判例

あるドイツ人男性が

「妻の豹変した行動」

に不信感をいだき、探偵事務所に不倫調査を依頼した。

ドイツ人の緻密さでこの探偵は仕事を完遂、浮気の事実だけでなく、相手の名前、住所なども突き止めた。

これを根拠に男性は弁護士に離婚手続きを依頼した。

浮気の現場を捕まれた奥さんは浮気を認めたが、当然の権利として

“Ehegattenunterhalt”(扶養費)

を要求した。

しかし旦那がこれを拒否、裁判所で争われることになった。

しかし裁判所は、

「離婚の原因を作った側が、生活費(扶養費)を要求する権利はない。」

 

と判決を下した。

それだけでは済まず、浮気の証拠をつかむのに必要だった探偵事務所の請求書、7000ユーロも奥さんが支払うべきだと判決した。

逆に男性の浮気が原因で離婚になった場合、扶養費は大目に請求できるので、証拠固めはお忘れなく。

* 注釈

1       離婚の際、子供の親権はもとより、ペットの所有権でも大きく揉めます。

2     だからお金持ちのパートナーは夫婦契約がないほうが得をします。

3       その方があなたの「取り分」が多くなります。

4       夫婦契約で別途、契約されていない場合です。

5       正確に言えば、ドイツでは同性婚も認められているので、ドイツ人男性と結婚するのは女性ばかりとは限りません。

6        元パートナーが4000ユーロ以上、稼いでいる場合。

-ドイツの達人になる, 恋愛、結婚、離婚

執筆者:

nishi

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