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ベルリン新空港 BER 計画より9年遅れで完成!!

投稿日:2019年8月16日 更新日:

ベルリン空港 BER 9年遅れで今度は本当に完成?

今回はドイツが世界で赤っ恥を書いた ベルリン新空港 を取り上げます。

完成にかかった年数は14年。

工期は計画より9年遅れ。

かかった費用は見積額の3.7倍。

なんでこんなお粗末な結果になったのか?

日本の皆さんに是非、知ってもらいたい。

なんで空港が3つもあるの?

そもそも首都ベルリンには、空港が7つもあったんです!

これじゃ効率が悪いので、

  • テーゲル空港
  • シェーネフェルト空港
  • テンペルホーフ空港

の3つに減らされました。

しかし!

ベルリンに空港が3つもあると、外国人にとっては頭痛の種。

「私の乗った飛行機は、一体、何処着くの?」

に始まって、

「どうやって市内にまで行くの?」

と、悩みが絶えなかった。

加えてベルリンにとっても騒音問題を3つも抱えることになり、あまりよろしくなかった。

そこで空港をひとつにまとめることにした。

これがベルリン市にとっての、悪夢の始まりだ。

なんとベルリン新空港は工事開始から完成まで14年もかかった。

 

おまけに

「新空港」

とは言うものの、実は既存の空港の拡張工事だった。

何故、こんな羽目になったのか、せめて要点だけでも解説してみよう。

シェーネフェルト空港 SXF

ベルリンに三つあった空港の内、一番郊外にあったのがシェーネフェルト空港だ。

その起源は30年代まで遡る。

ナチスが政権を取ると、ベルサイユ条約で禁止されている筈の航空機産業が、一気に開花した。

ベルリンの南、中心部から33Km離れたこの場所に、

“Henschel Flugzeug-Werke”(ヘンシェル飛行機工場)

が設立された。

 

折角なのでこの機会に紹介しておくと、飛行機製造の際の複雑な計算を簡素化する目的で会社の技術者、

“Konrad Zuse”

が発明したのが世界初のコンピューターだ。

参照 : Konrad Zuse

 

飛行機会社に滑走路はつきもの。

そこでヘンシェル社の開発実験用に設けられたが、後のシェーネフェルト空港だ。

戦後、この地域は東ベルリンになったので、ソビエトからの飛行機が離着陸することになる。

これに加えて戦勝国、イギリス、アメリカ、フランスも離発着が許可されていたので、空港として発展。

ベルリンの壁崩壊後は、ロシアからの便、それにチャーター便が離着陸していた。

加えて空港には空気駅があり、市内までは電車で20分ほどで移動できてしまう利便さがあった。

ベルリン新空港 とは?

そこでベルリンで伝統的に政権にあるSPDの政治家は考えた。

現在のシェーネフェルト空港をそのまま

「第二滑走路」

として利用すれば、

「滑走路を一本作るだけで郊外に大空港ができちゃう!」

と。

こうしてシェーネフェルト空港の南に新空港建設が始まった。

ちなみにその正式名前は、

「ベルリンーブランデンブルク空港」

で略称は BER だ。

質問
そのブランデンなんとかは、何ですか?

 

これは州の名前です。

そもそもベルリンは、街だけで州を形成する珍しい街。

そのベルリンは広大なブランデンブルク州の中に浮かぶ、小さな島。

新空港はシェーネフェルト空港に隣接して建設されるが、ベルリンの州境を超えて、ブランデンブルク州の土地に広がっている。

なのに、

「ベルリン新空港」

とやったら、ブランデンブルク州と喧嘩になる。

そこで、仲良く

「ベルリンーブランデンブルク空港」

と呼ぶことにした。

ここでは面倒なので

「ベルリン新空港」

と書きます。

ベルリン新空港 トラブル & スキャンダル集

そのベルリンーブランデンブルク空港の工事が始まったのは2006年。

2011年には開港する予定だった。

だって

  1. 滑走路をひとつ
  2. そ管制塔
  3. それに空港ターミナル

を建てるだけ。

5年もあれば、十分すぎると思われた。

非常ドアが作動しない

ドイツ人がすることなので、当初の完成予定日が守られないのは、

「お決まり」

です。

ベルリン新空港は工事現場の敷地面積では、欧州で一番大きな工事現場。

そんな大きな工事では、何かしら問題が出てくるもの。

だから完成時期が1年遅れ、2012年になっても、それほど大きな騒ぎにはならなかった。

2012年にはほとんどの工事を終えて、

「火災時の安全機能のチェックに合格したら完成!」

する筈だったった。

ところがである。

火事をシュミレーションするも、延焼を防ぐはずの非常ドアが作動しなかった。

空港関係者は、

「すぐに原因を調べて改善するので、開港予定に変更はない。」

と大見得を切った。

ところが何をやっても、非常ドアは作動しなかった。

数十キロにも及ぶ回線のどこかに問題があるのだが、何処に問題があるのかわからなかった。

こうして2012年の完成開港予定は再び延期。

次は2014~15年の開港を目指すことになった。

ベルリン新空港 小さ過ぎる?

一旦ケチがつくと、滅多にひとつだけで終わることがないのが大型工事の特徴。

ベルリン新空港も例外ではなく

“空港の規模が小さ過ぎる”

という非難の声があがった。

というのも、空港内に備え付けられたシックなデザインのチェックインカウンターは120個。

他の国際空港には224ものカウンターがある。

この120個のカウンターから預けた荷物を運ぶだけでも、20個のベルトコンベアが必要だ。

しかし、備え付けれられたのはたったの8個だけ。

空港の計画を監督する役員は、何をしていたんだろう?

「これではオープン早々に拡張工事が必要になる。」

と非難の声があがった。

実際、新空港は年間利用者数2200万人/年で計画されている。

ところが2017年にベルリンに空の便でやってきた乗客数は3300万人。

新空港がオープンすると、テーゲル空港とテンペルホーフ空港は閉鎖されるが、

どうやって新空港だけで3300万人の乗客を処理できるのか?

 

巷では

「テーゲル空港を更地にしないのは、再利用を考えているから。」

と言われている。

取り締まり役員辞任

非常ドアが作動しない件は、思っていたより

「ゆゆしき事態」

であったことが判明した。

建物の一部を取り壊して、作り直す必要があった

この時点で初めて責任問題が話題になった。

工事費用はすでに見積額を超え、今後、幾ら必要になるか、試算もできない哀れな状態。

空港管理会社の取り締まり役員には、ベルリンとブランデンブルクの州知事が座っている。

しかし両氏はお給料だけもらって、何も仕事をしていないのは明らかだった。

自分でできないなら、せめて誰かに代わって仕事をやらせるくらいの思慮があってもよかった。

ドイツ全土からの散々のブーイングで、州知事は役職からの辞任を余儀なくされた。

 

建物の作り直しが避けられないとわかると、空港管理会社はこれまで空港の工事を施工していた業者を、

「手抜き工事の廉」

で契約破棄した。

するとその会社は怒って、空港の設計計画書をもっていってしまった。

こうして不具合を直すにも、設計図がないので、

「何処から手を付けたらいいかわからない!」

という状況が生じた。

水増し請求

その後、空港管理会社の社長が工事施工会社から収賄を受けた件で検挙された。

この社長、ドイツ人にして珍しく反省できる才能があり、

「賄賂の1万5000ユーロを施工会社からもらって、水増しした工事費で仕事を発注した。」

と認めた。

工事施工会社の倒産

この関連で賄賂を贈った工事施工会社が倒産して、工事は完全にストップした。

こうして最後のかすかな希望、

「2015年の空港オープン」

も実現不可能となった。

こうした一連のスキャンダルで付いたあだ名は、

“Pannenflughafen”(問題空港)

だ。

公正を期すために言っておくと、空港内に設けられた空港駅、駐車場、それに歯医者は完成している。

利用客は工事現場の作業員だけだが、ちゃんと空港駅に電車が止まる。

そして空港の広大な駐車場は、排ガススキャンダルで売れなくなった車をパークするため、フルクスヴァーゲン社がレンタル、そして歯医者には工事の作業者が通っている。

ベルリン新空港 第二ターミナル

冗談で、

「ほとんど完成した空港を全部壊して、作り直したほうがいい。」

と言われていた。

これが冗談では済まず、完成していた空港は部分的に取り壊された。

加えて(空港はまだオープンしていないのに)増加する利用客に備えるため、簡単なコンクリート作りのターミナル2が作られることになった。

そしてこのターミナル2は、なんと工期通りに2019年に完成した。

参照 : Frankfurter Allgemeine

このターミナル完成により、

「ベルリン新空港は3千万の利用客に対応できる。」

と、空港関係者は自信満々。

もっともこれにはシェーネフェルト空港が、新空港の第二滑走路として引き続き利用されることが条件だ。

今度は本当に完成?

空港責任者は、

「もう作り直しは終わった。後は完成向けて工事をするだけ。」

と胸を張り、ベルリン新空港の開港予定日を、2020年の10月としている。

仮にこれが実現しても、工事が始まってから14年後。

最初の完成予定から9年も遅れている。

実は

「ベルリン新空港の恥」

は、なにもベルリンに限ったことじゃない。

その他の大型工事、ハンブルクのエルプフィルハーモニーからシュトットガルトの中央駅まで、工期が守られた試しがない。

これが今のドイツの実力だ。

加えて新空港の総工事費用も立派なもの。

当初の見積もりは20億ユーロ。

2020年10月にオープンした場合の工事費用は、73億ユーロになると見積もられている。

見積額の3.7倍だ。

ベルリン新空港 BER 計画より9年遅れで完成!!

ありとあらゆるジョークの対象になっていたベルリン新空港 BER 、10月31日に本当にオープンしました。

BER オープンに備えて特別なペイントを施されたルフトハンザ機が最初に到着する手筈になっていました。

が、また遅延。

コロナで暇な筈なのに、、、

結果、二番目に到着する筈だった Easyjet が先に到着するというハプニング付き。

Easyjet は邪魔にならないように空港の端っこでルフトハンザの到着を待ち、ルフトハンザが到着してからやっと、ターミナルに移動させてもらえました。

その後、ルフトハンザとEasyjetの社長、空港の責任者、政治家が出席して、おごそかな開会式。

ベルリン新空港  もう倒産?

オープンしたばかりの新空港だが、もう事実上倒産している。

10月末までに支払う請求書の総額が3億ユーロ。

オープンしたものの、コロナで休業状態に近い空港に払えるわけがない。

そこで州政府が援助をする予定だが、EU委員会から許可が出ていない。

空港と言えど、私企業。

政府が補助金で支援すると、他の空港との競争を妨げることになるので、EUからの許可がいる。

そこで補助金ではなく、当面は借入金としてお金を工面、倒産を回避することになっている。

空港は完成したもの、コロナがなくても2023年までにさらに5億ユーロもの補助金が必要とされている。

コロナで第二のシャットダウンの真っただ中、この費用がさらに膨らむのは必至。

とりあえず

「永遠に工事中の空港」

というレッテルは返上したが、今後は

「万年赤字空港」

のレッテルが張られることになる。

このレッテルも、そう簡単には剥がれそうにない。

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執筆者:

nishi

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