
総選挙まで2週間少々。
ここにきて急に白熱している争点が移民問題。
これが実にデリカートなテーマで、やり方を間違えると
「自殺点」
にもなりかねない。
以下に詳しく解説します。
この記事の目次
防げたテロ
2024年12月。
精神を病んだサウジ出身の精神科医が、クリスマスマーケットに車で突入した。
6人が殺されて、300名以上が負傷した。
実はこのテロ、防げたテロだった。
ベルリンでのテロの教訓から、
マーケットに向かう道にはこんな巨大なコンクリートの塊を置いている。

これで同様のテロは防げるはずだった。
しかし救急車などが迅速に現場に迎えるように、
「抜け道」
をこしらえている。
そこには警察車両を止めておき、テロを防ぐようになっていた。
しかしこの日、警察は指示された場所から30m離れた場所に車両を停車。
お陰でテロリストは易々と、コンクリのブロックをスラロームで回避、テロを実行できた。
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アシャッフェンブルクではアフガン人が幼稚員の子供にナイフで襲い掛かり、2名が殺された。
このアフガン人、何度も傷害事件を起こして難民申請も拒否されていた。
外人局の役人はそんな危険人物の身柄を確保せず、自由に生活させていた。
総選挙 勝利の処方箋
去年の米国での大統領選挙。
最大の選挙テーマのひとつが移民問題。
民主党は
「多様化が進歩の源」
と信じ、移民の流入を許容していた。
これが治安の悪化を招くとよりによって
“Latinos”(ラテン系市民)
の反感を買い、トランプの圧勝に繋がった。
同じ移民問題に悩むドイツの政治家(CDU/CSU)が、これに
「総選挙に勝つ処方箋」
を見出した。
泣いて馬謖を切らず
総選挙の前に起きたふたつのテロ。
警察や役人が
「すべき事」
をしていれば、防ぐことができた。
しかしCDU/CSUはテロを可能にした公務員を
「泣いて馬謖を切る」
代わりに、
「悪いのは難民」
という危険な方向に舵を取った。
総選挙 野党による法案提出
それにはまずは
「法案決議」
を国会に提出する。
議論の後、この決議を採択するかどうかの投票が行われる。
この投票で過半数を取ると、
「法案決議が採択」
となり、野党は正式に改正法案を国会に提出できる。
その後、この改正法案の是非に関して議論される。
最後に国会で投票。
もし両国会で過半数が獲得できれば、法律となる。
今のドイツや日本のように
「少数派政権」
が誕生している時は、法案次第では野党にも大きなチャンスがある。
極右政党の二番煎じ
しかし!
移民法改正案を出しても、
「難民大歓迎」
の社会民主党と緑の党は賛成しない。
賛成票を当てにできるのはFDPだけ。
しかしこれではまだ過半数に満たない。
そこでCDU/CSUは
そうなると今回の法案提出は、
「極右との共同はない。」
という約束を反故にするもの。
にも拘わらず、CDU/CSUは移民問題に総選挙の命運をかけて
“All in”(すべてを賭けて)
勝負に出た。
狂喜する極右政党
これまで極右政党の真似をした政治家は多かったが、選挙民はオリジナルを優先した。
すなわち!
「付け焼刃の右翼思想」
は、総選挙で負ける原因となりかねない危険な行為。
にもかかわらず、1月29日CDU/CSUは
「移民法の改正決議」
を国会に提出した。
この決議は案の定、
「極右政党の賛成票」
の助けがあって、過半数を獲得した。
この結果に一番喜んだのは極右政党。
既存政党の
「極右政党とは共同しない。」
という
「極右ブロック」
を突破した事実に、極右議員は狂喜した。
一方、過半数を制したCDUのメルツ党首に勝利喜びはなく、
「やっちまった。」
という後悔の表情さえ読み取れた。
総選挙 反対デモ
既存政党が
「極右政党とは共同しない。」
という約束を自身の利益の為に反故にした事に、良識のある国民は絶句した。
これではオーストリアの二の舞だ。
https://pfad.tech/blog/fall_oesterreich/
それどころか隠居していたメルケル首相まで
「あってはならない事。」
と批判記事を投稿した。
これはかってメルケル(前)首相に党職をすべて奪われたメルツ党首の闘争心を煽り立て、
「正しいことは、極右が賛成しようがしまいが、正しいことだ。」
と反抗している。
可決するか移民法改正案?
こうして国会に移民法の改正法案が出された。
主な変更点は
- 入国許可証を持っていない移民の国境での入国拒否
- 警察の権限の拡大(移民の身柄確保・勾留等)
だ。
総選挙前にこの移民法改正案が可決されれば、CDU / CSU には大きな
「追い風」
になるかもしれない。
反対しているのは、
「良識のある国民」
だけです。
どこの国でも、
「良識のない国民」
の方が圧倒的に多い。
こうした国民層を別名
「保守層」
と言う。
極右政党に流れた
「保守層の票」
を奪還できれば、総選挙での大勝利も夢ではない。
もっとも良識のある国民に嫌われて、
「惨敗」
する可能性もあるが。
ところがである。
肝心の法案は採択で
「わずか10票差」
で、過半数に届かなかった。
一部のFDP議員が反対、あるいは棄権票を投じたためだ。
メルツ首相は今、総選挙前の最後の国会で、
「二度目の採択」
を目指している。
もし可決されれば、CDU/CSUは来る総選挙で勝利できるかもしれない。
それとも?




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