
9月22日、東ドイツ ブランデンブルク州選挙があった。
僅差ながら勝利したのは社会民主党(SPD)。
そう、ドイツ全土では支持率が一桁の政府与党だ。
一体、何が良かったのだろう?
以下に詳しく解説します。
この記事の目次
ブランデンブルク州
という方にわかりやすく説明すると、
「ベルリンの周囲を覆っている州」
です。
ほぼ3万平方キロメートルの領土を有している。
岩手県のほぼ倍。
なのに人口は258万。
ベルリンの人口よりも少ない。
もっとも岩手県の人口も117万なので、人口密度で言えば岩手県並み。
東西ドイツ合併後、失業率が18%にまで上昇。
その後、失業率は全国平均まで戻ってきたが、経済的には未だに発展途上。
そこで政府はベルリン新空港を建設するなどして、インフラ投資。
お陰でテスラもベルリン新空港から目と鼻の先に工場を建設するも、環境保全団体と衝突。
なかなか経済的に先に進み難い環境が揃っている。
言い換えれば自然が豊富。
政治
何故か、ブランデンブルク州では伝統的にSPDが強い。
西ドイツに吸収されて、
「ブランデンブルク州」
が創設されて最初の選挙が1990年。
以来、34年間、常にSPDが勝利してきた。
ベルリン同様に、ここだけはSPDの地盤だ。
ブランデンブルク州選挙
極右政党の躍進の波は、そのブランデンブルク州にもやってきた。
https://pfad.tech/blog/afd_aufwind/
世論調査では極右政党がトップ。
選挙前はブランデンブルク州陥落は避けられないと思われた。
一体、州知事のWoidke(ヴォイトケ)氏はどんな手を使って、劣勢を挽回したのだろう?
背水の陣
劣勢を見たヴォイトケ氏は背水の陣で行くことにした。
すなわち!
と撤退用の橋を焼いた。
言い換えれば、
「極右政党が第一党になれば、あなた方(選挙民)の責任だよ!」
というわけだ。
さらにもうひとつ、実によく考えた選挙戦を展開した。
それは中央政府と一緒の選挙活動を避ける事。
ベルリンから目と鼻の先のブランデンブルク州。
ショルツ首相は(こなくてもいいのに)選挙運動の支援にブランデンブルク州に何度もやってきた。
しかし!
支持率が一桁のショルツ首相と一緒の姿を報道されては、大きなイメージダウンになる。
そこでヴォイトケ氏はショルツ首相と一緒の選挙運動を、すべて避けた。
考えて欲しい。
広島で衆議院議員選挙があり、岸田首相が広島に応援演説にやってくる。
しかし立候補者は首相を避けて、一切合わないようなもの。
どれだけショルツ首相の人気がないか、日本の皆さんにもわかるだろうか?
ブランデンブルク州選挙 SPD僅差で勝利

ドイツでは18時に投票所が閉まると、ほぼ間髪を置かずに
「出口調査」
をして選挙結果(速報)
が出る。
これが割と正確なのが不思議。
第一報では苦戦を報じられていたSPDが
「僅差で第一党!」
だった。
その後、開票が進むにつれてSPDと極右政党との差はやや広がった。
最終的には得票率2%の僅差で、SPDが接戦を制した。
ヴォイトケ州知事の背水の陣がうまくいった。
選挙結果の分析
ブランデンブルク州選挙でも、選挙民の投票活動の動向はザクセン州とチューリンゲン州と同じ。
https://pfad.tech/blog/sieg_afd/
すなわち!
若者は大挙して極右政党に投票した。
まだ50代の選挙民でさえ、過半数が極右政党に投票。
やっと60代からの投票者になると、SPDが第一党になる。
要するにお年寄りほど、SPDを選んだ。
加えて単純な男性は圧倒的に極右政党を支持。
慎重派の女性は圧倒的にSPDを支持。
学歴でも同じ。
すなわち大卒はSPDを支持。
大学教育を享受できなかった者は、極右の嘘に騙された。
面白いのは収入。
平均から平均以下の収入では、極右政党が圧倒的な支持を受けた。
要するに、生活が苦しいから極右に投票しているわけだ。
困難な過半数確保
それでも今回のブランデンブルク州選挙が、ザクセン州とチューリンゲン州選挙と大きく異なる点がひつある。
それは議席を確保したのが
- SPD
- 極右政党AfD
- CDU
- BSW
の4党しかない点。
もし極右政党が第一党になっていれば、仲良しのBSWと連立を組んで楽勝で過半数を獲得できた。
しかしSPDが第一党になった為、SPDが連立を試みるのが民主主義の掟。
ところがである。
民主勢力のSPD+CDUでは、過半数に1議席足らないのだ。
すなわち!
これは頭痛の種。
BSWは
「ウクライナへの武器提供の即時中止!」
を求めており、ほぼトランプと同じ路線。
「こんなポプリストと連立を組むくらいなら!」
とSPDとCDUで少数派政権を組むことはできる。
が、州知事の選出選挙、予算審議で毎回、
「BSW様、ご慈悲を!」
と頭を下げて賛成票をめぐんでもらう必要がある。
せめてCDUがあと1議席多く獲得していれば、こんな面倒は避けられたのに、、。
思わぬ副作用
今回のSPDの勝利は思わぬ副作用があった。
それはブランデンブルク州に選挙応援に行ったショルツ首相が、
「ほらね、俺が行くと選挙に勝てるんだよ!」
と100%勘違いしてしまった事。
シュルツ首相はマジで、
「来年の総選挙に勝てる!」
と勘違いしてしまった。
ザクセン州とチューリンゲン州 では選挙応援に行って負けたのに。
シュルツ首相の
「自信」
な、ほぼ病気レベルです。
[…] SPDはブランデンブルク州で勝利したので、非難は想定内で済んだ。 […]